技術コラム
ネオジム磁石の加工・切断
こちらの記事では、ネオジム磁石の概要や加工事例におけるポイント、さらには実際の加工事例までご紹介いたします。
<目次>
・ネオジム磁石とは
・耐熱性ネオジム磁石の需要の高まり
・ネオジム磁石の加工・切断におけるポイント
・ネオジム磁石の加工事例
・まとめ
ネオジム磁石とは
ネオジム磁石(英:Neodymium Magnet)は、永久磁石の中で最も磁力が強いとされている磁石で、希土類元素のネオジムと鉄・ホウ素を主成分にもちます。そのため、正確にはネオジム・鉄・ホウ素磁石という名称です。
ネオジム磁石は、1982年に住友特殊金属(現、日立金属)の佐川眞人氏によって発明されました。流通量が多いフェライト磁石に比べ8~10倍もの磁力と高い保磁力をもち、高い性能が要求される電子機器に多く使用されています。
ただし、このネオジム磁石には主に2点、注意点があります。
1つ目は、材料構成の6割を鉄が占めているため錆びやすいことです。そのため、防錆対策として一般にニッケルめっきを施すことが多いです。
2つ目は、耐熱性が低いことです。ネオジム磁石は熱に晒されると磁力が低下します。一般的なネオジム磁石の耐熱温度は約80℃です。(フェライト磁石やサマリウムコバルト磁石の耐熱温度は約300℃)
*ジスプロシウム(Dy)を添加することで保磁力および耐熱性を上げた種類もあります。
耐熱性ネオジム磁石の需要の高まり
耐熱性ネオジム磁石とは、ネオジム磁石の短所である耐熱性の低さを補うため、ネオジム磁石にジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類元素(重レアアース)を添加して耐熱性を向上させたネオジム磁石です。
本来であれば使用条件が80℃以下であるのに対し、ジスプロシウムを添加して保磁力を引き上げることで、最大400℃程度までであれば使用できるようになります。
ただし近年では、
①耐熱性ネオジム磁石の需要が高まっており、価格が高騰している
②ジスプロシウムの産出量の約90%が中国に集中しており地政学的リスクを孕んでいる
③地球上の存在比がネオジムのおよそ10%ほどしかなく、希少性が非常に高い
という3つの理由から、ジスプロシウムを使用しない耐熱性ネオジム磁石の開発や代替材料への置き換えが模索されています。
ネオジム磁石の加工・切断におけるポイント
ネオジム磁石は、硬くて脆いので切削では加工が困難なので、研削で加工を行います。ただし、GC砥石やWA砥石といった通常の砥石では、研削できません。そのため、ダイヤモンド砥粒配列砥石を使用する必要があります。また乾式ではなく、湿式で加工を行います。
ネオジム磁石は6割が鉄でできており、他の磁石と比較してさびやすいです。そのため加工中の工程間や加工後に、完全に乾燥させて湿度の低い部屋で保管するか、防錆液でつけおきする必要があります。
ネオジム磁石の加工事例①:産業モーター用ネオジム磁石 角物
こちらは、工作機械の産業モーター用部品を高精度かつ短納期に加工した事例です。お客様から20×50×60のネオジム磁石を支給いただき、角物形状に研削切断いたしました。
通常、磁石の加工において、こちらの事例のような±0.03という寸法公差は厳しいです。しかし、当社では、研削機を機械メーカーと共同で設計段階からカスタマイズを行うことで、一般的な研削機の能力を超える性能があります。そのため、±0.03という厳しい寸法公差もクリアすることができます。
ネオジム磁石の加工事例②:自動車モーター用ネオジム磁石 円筒型
こちらは、自動車に使用されるモーター用のネオジム磁石を高精度に加工した事例です。お客様から15×40×50のネオジム磁石を支給いただき、円筒形状に円筒研削および内周研削を行いました。
円筒研削盤・内周研削盤を用いて円筒形状に加工いたしました。また、キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-8000を用いて精度保証を行っております。
ネオジム磁石の加工事例③:試験用ネオジム磁石 角物
こちらは、試験用にネオジム磁石を高精度に加工した事例です。
お客様から頂いた支給材が焼きちぢみにより平面が出ていませんでした。そのため、下面を接着したうえで、まず平面研削盤を用いて上面の平面を出し、次いで下面も平面研削を行います。そのうえで、角物形状に仕上げております。
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今回は、ネオジム磁石についてご紹介しました。
「磁石加工・切断センター.com」を運営する株式会社サンキコーは、ネオジム磁石を始めとした様々な磁石の加工をの加工を行ってきました。
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